会社を辞める、と会社に伝えたあなた。 上司の説得にも折れず、退職が確定したあなたは引継ぎに追われます。 引継ぎが進むにつれて、辞める実感が少しずつ湧いてきました。
同時に徐々に不安になっていく自分にも気付くはずです。
そんな折、人事のヒトが神妙な顔をしてやってきました。手には一枚の紙が。
人事:「○○さん、これ記入して最終出勤日までに所属長に提出してください。」 あなた:「は?」
退職者が一番不安になっているときに何の説明も無く突き付けられる書類... 読めば読むほど不安になっていくその内容。
ここでは退職時の誓約書について取り上げてみます。
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これって何? |
ああ会社って… |
人事から受け取った「誓約書」。 この手の企業運営用書類を集めたフォーマット集が多量に流通しているらしく、 多くの会社で実に「便利」に利用されているようです。
この「誓約書」は一定期間の間、
・機密漏洩封じ ・競合他社への転職封じ ・退職者の退職後の行動により損害が発生した場合に弁済を約束させる
というような目的を持っています。 つまり「会社が絶対に損をしない」ような約束をさせられる書類です。
会社はこういうことに知恵を振り絞る前に、退職者を減らす努力をして欲しいものですね。
技術職・専門職はほぼ100%、書かされます。 最近は営業職やその他の職でも退職時に「誓約書」を書かされているケースが多いようです。
ちなみに退職時の誓約書で一定期間、同業他社への就業を制限するのは、違法行為ではないようです。
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誓約書をよく読む |
おかしいことが書いていないか? |
でもこんなものうっかり書いてしまったら後々トラブルになるんじゃないか...」という不安もあるでしょう。 結論からいってしまうと「十分ありえます。」 まずは人事に「これ書かないとダメですか?」とトボけて聞いてみるのもいいと思います。
うまくいけば書かないで辞めさせてもらえるかもしれませんが 大抵は書かないと辞めさせてもらえません。
ちなみに僕は会社を辞めるたびに書いています。
提出しないと辞められないのなら、提出するしかないですね。 しかし、あなた自身もちょっと気をつけてください。そこで自衛策。
「内容をよく読む」 「記入後の誓約書のコピーを取る」
「内容をよく読む」っていうのは狂った内容が盛り込まれていないかをチェックするためです。 たとえば「辞める場合は研修費用を負担する」などですかね。 僕は普通(?)のしか見たこと無いのですが、中にはあまりにも勝手過ぎる「誓約書」もあるとか。 あれ?これはおかしいぞっていう項目があったら労働局に相談したほうがいいと思います。 こういうときに人事はアテになりませんから。 「あ〜それは形式的なものですから。アハハハ〜。」なんて言われて終わりです。
「記入後の誓約書のコピーを取る」っていうのもできれば忘れないでください。 提出までに余裕があるのなら、記入後に近所のコンビニかどこかでコピーしましょう。 もしタイミング的にコピーが取れないまま提出しなきゃいけないようなら、 「すいません、これ、私の方でも保管しておきたいのでコピー取って貰えますか?」と人事にお願いしましょう。 ごねるようなら「いや、持ってないと忘れちゃうので。」で斬り捨ててください。
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退職時の誓約書の現実 |
実際はどうか? |
退職時の誓約書を今まで何度も書きました。しかしトラブッたことはありません。 ほとんどの場合、訴訟などのトラブルに発展する場合は無いと思います。 ただし、退職者自身も気をつけなきゃいけないですよ。
何を気をつけるか。それは「辞めた会社のことには極力関わらない」ことです。 うっかり内部の情報を人に話してしまったり、誹謗中傷したりっていうのは止めましょう。 辞め方によっては、会社に復讐したいっていう気持ちもあるかと思います。 それはぐっとこらえるか、訴訟を起こすかしてきださい。 ネットなどで名指しで誹謗中傷すると、痛い目に遭うかも知れません。
退職時の誓約書が元で訴訟になるケースは存在します。 調べてみたら、機密を持って競合する他社へ転職した、というものでした。 僕が文献で見たケースは退職者の作為を感じざるを得ませんでした、だからトラブルになったと思われます。 でもひょっとすると元いた会社の嫌がらせかもしれません。
これで問われるのは何をもって機密とするか、ですね。 裁判所側の判断では、
「書物・業務上などで万人が十分取得可能な業務上の能力」については 機密にあたらないという見解のようです。
なんでもかんでも機密扱いする会社がありますが、 会社が機密とする判断と、世間一般や裁判所が機密とする判断は違います。 広く知られた技術をありがちに組み合わせて「機密」なんてチャンチャラおかしいですし、 中には社内の決済系統や人事体制を機密にしてるバカ会社もあります。
また裁判所は退職者と会社を比べた場合、会社のほうが強いということを承知してます。 さらに職業選択の自由の見地からも退職者の方が比較的有利ではあります。 仮に裁判で退職者が負け、新しく勤めた会社を辞めることになった場合、 十分な補償をせよ、という見解でもあります。
が、
退職者が自己の利益を追うばかりに会社に損害を与えたということが立証されれば、 賠償責任を負う可能性は十分ありますし、 元いた会社が狂った被害妄想会社であればいきなり訴えてくる可能性もあります。
辞めた会社と揉めるのは、
時間の無駄です。 コツは会社に対して突っ込まれるポイントを作らないこと。 例えばプログラムそのまま、設計図そのまま、デザイン案そのまま、営業資料そのまま、 人事資料そのまま、こういうのを持ち出さないことです。 いくら経験の証明とは言え、他社に送りつけるなんてもってのほかです。
転職先の「応募の秘密は厳守します」、といううたい文句を信じるか信じないかはあなた次第です。 (僕は信じてません。)
「だいじょぶだろー」と、 プログラムを持ち出して職務経歴書といっしょに同業他社に送りつけてしまうプログラマや、 在籍していた会社で作ったデザイン案を持ち出してしまうデザイン部署の方々は危険です。
社内にも残っているものを外部へ持ち出すっていう行為は自殺行為と僕は考えます。 退職時であればなおさらです。
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書くべきか書かざるべきか |
過去の退職者を参考に |
結論から先に言ってしまうと誓約書は「書くも書かぬも退職者の責任」です。というのも、
「会社がどんなつもりで書かせているか」 「退職者の会社での立場(ヒラか、経営陣かetc)」
などの要素で変わってくるからです。
念には念を入れて、万一の時の懐刀として誓約書を書かせる会社もあれば、 「辞めやがってこの野郎!ただじゃすまさねえぞ!」と怨念いっぱいで書かせる会社もあるでしょう。
僕は今まで書いてますし、これからも書けといわれれば書きますし、 書いたことでトラブルになったことはありませんが、同業他社・競合他社への 転職を避けたり、同業界に戻るときは縛り期間を経過した後に戻るなどの自衛策を取ってます。 元いた会社に不利益になるようなことはしないようにしているのです。
個人的見解ですが、 退職者もトラブルを避けようとする努力が必要 なのではないでしょうか?
しかしひとたびトラブルになってしまったら、 腹を括って労働局なり労働基準監督所なりに相談してください。 元の会社にいわれるがままにする必要はありません。
一番参考になるのは過去に退職した先輩・後輩・同僚がどうやめていったか、です。 あなた自身が心配であれば労働局に相談してみてください。
またネットでもある程度調べられます。「退職時の誓約書」などのキーワードで検索してみて下さい。
どうか、会社を辞めたいと思う人全てが無事に辞められますように・・・。
そして最後に、逆の例を。知り合いで「こんな誓約書、関係ねえよ!」と 同業他社に転職しまくってる人がいますが、その人も一度もトラブってません。こういう人もいます(笑)
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